手抜きの一冊

会社法制定に伴い，商法の改正も行われてからすでに2年余り，
当然に，全ての記事が現行商法の規定に従った解説をしている，
と思って購入したら，いくつかの記事は，商法百選「独自の」編集方針なのか，
その記事の執筆者の方の方針なのかは分かりませんが，なんと，
依然として旧規定の条数のままです。


この点から，上記の説明にある，「平成17年改正に対応した」
というのは誤りを含みます。


丁寧に現行の法令にあわせた対応をされている方がおられる一方で，
条文の文言ですら，判旨などの引用部分でもないのに，カタカナのまま
引用する方がおられます。
このような方は，今回の改訂に当たり，
原稿を読み直すことすらせず，そのままにしたのでしょうね。


また，保険法など，未施行とはいえすでに成立済の法令にも配慮される
方がおられる一方で，未施行法令に一切配慮しない方もおられます。

百選の改訂頻度を考えれば，未施行法令にも一定の配慮をすることが，
読者・利用者に好ましいことは確かです。


このような書籍は，編集方針の統一すらしない点においても手抜きの文献
であって，品質が低いというほかありません。


また，判旨は原文のまま読むことに重要な意味があるとはいえ，
ほぼ全ての記事が，大審院判例について，句読点を付加するなどせず，
そのまま掲載していることも，読者にとって優しくないといえるでしょう。


数年に1回しかできない改訂ですし，時代に置いて行かれない内容が
求められると思います。