ボクガール

前巻の予感に満ちた終わりから、
主人公瑞樹は男の子の精神と女の子の身体の二面性の中を小動物のように行き来します。
特筆すべきは七太郎・V・山田ですが、
彼の存在が作品全体を貫く阿呆らしさをとても良い意味で加速させています。
ロキという、
文字通り悪魔的少女がボクガールを展開の起伏、
アイテムや試練といった視点でリードしていくのかと思いきや、
ルームメイトの不在をこの場面でこのような破壊的キャラクターに任せるとは、
本当にすごい(クレイジーな)作品ですね。
ロキが全体を構築する役割かと思っていたのに、
七太朗は彼女の思惑さえも破壊して行きそうです。
良くも悪くも予定調和的な展開を全く予測不可能な行動で切り裂いていく、
なんて楽しい漫画なんだ。


展開の肝としては、
藤原さんにデートに誘われ喜ぶ瑞樹と、
デート中に苛立つ瑞樹のあり様だと思いますが、
猛の背中に捕まるロキの描写や七太朗の富士、
絆創膏、
瑞樹のメールや上目遣いなど、
要所ごとに印象的なシーンがあり、
物語の筋は勿論のこと、
話の中にさまざまな読みどころがあり、
いくつもの視点で楽しむことができます。
トランスジェンダーものと簡単にジャンルを規定することが出来ないような幅を持っているのは、
コメディドラマのテンポを巧みに作品に落とし込み、
太い輪郭に線の美しい絵柄とキャラクターのアニメイト、
作者のユーモアのセンス、
そして可愛らしさと過激ではないエロさ、
登場人物の個性（猛の性格の良さや七太朗の狂気など）が絶妙に、
本当に絶妙に混ざり合った結果だと思います。
本当に読んで損はない作品だと思いますので、
変態だと誤解されても大丈夫だという勇気のある方はまとめて購入されてみてはどうでしょうか？