アモントン･クーロンより出でてアモントン･クーロンにもどる

この本は,摩擦についての現在までの状況を100ページあまりで解説しています.
内容がてんこ盛りのような気もしましたが,材料の取捨選択がうまく行われており
わかりずらいポイントはあまりなかったように思います.
摩擦について有名な法則がアモントン･クーロンの法則がある.
まず第2章でアモントン･クーロンの法則の成立機構をアスペリティに基づく
凝着説から説明しています.第3法則である動摩擦係数についても
ミクロな凝着によるスティックスリップからの説明があり,納得できました.
3章では,アモントン･クーロンの法則には出てこない
接地時間や速度による摩擦係数の変化についてを同じくアスペリティの
クリープ現象を熱ゆらぎ用いて説明がされています.
4章では原子分子での摩擦の説明で,特におもしろかったのは
原子配列で同軸上になる角度では摩擦係数が大きくなり,
それ以外では摩擦係数が小さくなると言う,コメンシュートやインコメンシュートの話題です.
5章では,ふたたびアモントン･クーロンの法則に戻り2章で設定した前提条件を超えて
もアモントン･クーロンの法則が成立している事実を述べ,
このあたりが未解決であると締めくくっています.
全編を通して軸となっているのはスティックスリップ現象でいろいろな場面で出てきます.
内容は盛りだくさんですが,非常にわかりやすくおもしろいと思いました.