大変学びやすいテキスト

なぜ高評価するに至ったかの理由を列挙。

1.漢方薬の方剤構成を、
その処方名の由来から、
分かりやすく覚えられるよう工夫してある。

2.実務的には覚える必要が薄い部分を取っ払って、
生薬の効能、
なぜ方剤に加えるかの意味合いを、
やはり分かりやすくまとめてある。

3.弁別が難しそうな漢方薬の処方が、
実は（民間処方ではなく医家であっても）チャート式で気楽に処方できることを示している。
この件は同じ著者のフローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)が実践編に位置づけられる。

4.漢方医学では定番である大塚先生のご本など、
いろいろ読んできたつもりだが、
実践のためには古典などにもあたり理解する必要があり、
実務的にはどうもピンとこなかった。
だがこの本は、
実用性を重んじて、
実践のために必要な要素を、
簡潔に記している。
それは1から3で記述した理由による。


漢方医学に興味のある先生、
薬剤師の方は、
まずこの本からスタートしてはどうかと思う。
創元社とか医道の日本社あたりから、
古典の邦訳や、
様々な解説書（ただし分厚い）が出ているが、
この本に出会ってからは、
正直、
無理してそれらの本を読む必要は感じなくなった。
ただ、
教室や抄読会で学ぶ機会に恵まれているなら、
やはり古典は紐解くべきなのだろうとも思う。
なぜなら、
モダン漢方は、
いわゆる五診のうち、
脈診や腹診にまでは踏み込まない-できれば身に付けるべきだが、
無理して学ぶ程でもないというスタンスのようなので、
正統の漢方からいえば、
どうしても簡易なのは否めない。

もっとも私は、
現代医学的な情報（画像診断や血液検査など）と問診だけで充分であり、
無理に職人技的な脈診や腹診などしなくても、
同程度の結果は得られると思うのだが、
いかがなものか。


（10/14：追記）