信越化学工業を世界に羽ばたかせた金川千尋の側近の話

業界人であれば知らない人がいないくらい有名な経営者として　｢金川千尋｣　氏の存在があります．シリコンウエハ，塩化ビニールで今や世界に羽ばたいている信越化学工業も20年前は今ほど優良企業であったとは言えなかった，これを一躍飛躍させたのが金川氏だったと言われています．その事実を側近（財務・経理管轄の取締役）の目からまとめたのが本書です．会社経営に興味がある方が読めば非常おもしろい一冊です．読みやすく，すらすら読めるのではないでしょうか．

金川氏は2冊の自叙伝を書かれています（本書の参考文献でもある）．

・『社長が戦わなければ，会社は変われない』
・『毎日が自分との戦い（日系新聞，私の履歴書書き下ろし）』

本書にこの2冊を併せて読めば更に信越化学の進化の過程が深読みできます．信越化学は2008年3月まで増益を続けていました．2009年3月期は減益にはなったモノの，あのリーマンショックにおいても増益を続けた凄い会社が信越化学なのです．その強い会社の基盤を作ったのが金川氏です．会社経営に興味のある方には大変興味深い一冊になると思います．

もう一点印象に残ったことが，金川さんの上司に当たる小田切さん（元会長・社長）への想いであり，感謝の気持ちです．会社の仕事には常に人間の信頼関係が根幹であることを再認識しました．伸びる会社は人間関係（部下と上司の関係）の構築にも成功しているわけです．会社人生において，良い上司に出会うことが良い仕事ができるオリジンになり，会社発展の重要用件にあるように感じました．