何から何までAPHEX TWINだった

「つい出すのを忘れていた」という94年の未発表作"Caustic Window LP"のテストプレス盤が突然Discogsに出品され、
APHEXロゴをつけた緑色の飛行船がロンドン上空を飛び回り、
ニューヨークの地面にまでロゴが貼られて「これはもう新作しか無いだろう」なんて希望的観測を持っていましたが、
まさか本当に来るとは思いませんでした。

Richard D. JamesことAphex Twin、
"Drukqs"以来の新作。
長過ぎる13年でした。


この13年の間でRichardはロシア系のAnastasiaという女性と結婚し、
現在はスコットランドの小さな村に居を構え、
子供も二人いるそうです。
(米Rolling Stone誌とのインタビューでは毎朝子供を学校に連れて行くことの面倒臭さについて語っていましたが、
正直そんな光景全く想像出来ません。
)
13年のブランクとRichardを取り巻く環境の変化が彼の音楽にどう影響するのか、
多くの人は期待と不安が入り交じっていただろうと思います。

そんな中で、
彼はいつものように平然と、
「Aphex Twin」としか形容することのの出来ない凄まじい作品を作ってくれました。


基本的な方向性は、
"Analord"シリーズのメロディアスかつハードなアシッド・ファンクを軸に、
"Analogue Bubblebath"や"Surfing on Sine Waves"の奇妙なビートと"Selected Ambient Works 85-92"のアンビエント・シンセを流して、
そこに"Windowlicker"の狂気じみた人声や変態的な展開を持ち込んだような、
とにかくキャリアを横断、
総括するようなサウンドです。

冒頭の"minipops 67 [120.2] [source field mix]"の歪んだポップ・チューンからして、
かつて"Windowlicker"に続く作品としてまさしく私が期待した、
そして13年間待ち望んだサウンドそのものでした。

しかし逆に言えば、
かつてAphex Twin名義のアルバム全てにあった「未知の音楽」に対する驚愕はあまりありません。