どちらにも感情移入してしまう客観的作品

【ネタバレ注意】

この映画を観る前は、
実話をもとにしているということも知らなかったので、

海賊との心理戦や攻防をエンターテイメントとして軽く楽しめればいいなぁ
ぐらいの感覚で観始めたのですが、
まさかこんなにも真面目な映画だとは思いませんでした。

もちろんエンターテイメントとしても十分楽しめました。


フィリップス船長はとても聡明で、
乗組員たちも真面目で、

武装していない貨物船ということはありますが、

この船の一体どこにあんな小さくしょぼい船の海賊たちに乗っ取られてしまう
因子があるのかと不思議に思い、
とても興味をそそられました。


船長は賢くても、
乗組員がひどくアホでそこを突かれる、
みたいな
ほぼ先の展開のネタバレのような伏線があったりするもんですが、

そういった隙のようなものがほとんど見受けられなかったように思いました。


これといったミスもなく、
海賊に襲われないよう最善を尽くしていたように見えましたが、

それでも海賊が色々な障害を掻い潜って近づいてくる。

海賊たちの執念のようなものを強く感じて恐ろしく思いました。

この海賊たちの「真面目さ」みたいなものがもうめちゃくちゃ恐ろしいんです。

最後には奮闘むなしく、
貨物船にハシゴを掛けられてしまうのですが、

この時の絶望感が尋常ではありませんでした。


後半は、
果たしてどっちに感情移入して観たらいいのかわからなくなり
少し混乱してしまいましたが、
救命艇をアメリカの戦艦が取り囲むシーンを見て
アメリカってやっぱり怖いやと思いました。

小グマをいじめていたら後ろに超巨大な母グマが現れたみたいな感じでした。


海賊たちはもちろん悪いことは間違いありませんが、

彼らが海賊行為をするに至ったのには先進国にも原因があり、

なんだかやるせない気持ちになってしまいました。


勧善懲悪ではない物語はイマドキ珍しくないように思います。