電力の鬼、東京電力、中部電力、九州電力の基礎を創った先達の夢と努力を余すところなく伝える好著！

いま、
松永氏の佐賀県唐津市の虹の松原の別荘、
海浜荘の近くでこの文書を書いています。
新聞に連載記事として掲載されたものを編集したようですが、
とても面白い本です。
まだ電力産業が巨大産業ではなく、
個人が投資して経営できる時代だったのでしょうが、
電力にかける夢、
電力を通じて社会に貢献するんだという松永氏の意志がよく紹介されています。
なにより松永氏が実業家であるとともに、
文化人、
趣味人としての魅力があり、
その魅力を余すことなく、
明治の人間の厚みとして描かれています。

　また別の観点からいうと、
電力の地域独占は自然独占で当然の帰結であること、
発電・送電・配電・販売の一貫体制を維持してこそ合理的な電力会社の運営ができることがよくわかります。
現在、
官僚たちは電力産業に対する自己の利権を拡大するために、
自由競争、
発送電分離が盛んに主張していますが、
結果的には一貫体制に収れんすることは明らかです。
こういう歴史を無視し議論を進めることにどんな意味があるのかといいたいです。

　松永安左衛門氏に関する評伝はいままでいくつも発行されてきましたが、
丹念な取材にもとづく情報量、
そしてなによりも官僚や政治家に対して堂々と主張した松永氏の意志を正確に紹介するという意味で、
現在のみなさんにぜひ読んでいただきたい本です。