夢のある商品

外見に似合わずこの型のヘッドフォンは屋外での使用は向いていない。
電車の中や雑踏では、
遮音性がほとんどなく、
耳を痛めない程度の音量で再生していると聞きづらいか、
聞こえない。
また総じて低音が逃げる傾向にある。

本機種の特筆すべき特徴である帯域の広さも、
爆音で聞く、
何かが流れていればいいという方は必要としないであろう。

この機種に向いている音楽は、
小編成室内楽（アンサンブル）だ。
中音から高音の分解がよく、
弦楽器、
管楽器ともに相性がよい。
中音に厚みのあるバイオリン、
透き通ったクラリネットを持つ。
楽器が多くなっても分解の良さは健在だが、
とくにソロでその良さを十分に発揮する。
a cappellaなどもよい。
声量があり、
声の良さを前面に出したアーティストの楽曲は声の張りや厚みが感じられ、
耳元で息継ぎしているような感触を覚える。

また装着感も、
従来のものと違い、
長時間の装着でも耳が痛くならない。
木製の軽さが生かされ、
装着していることを意識させず、
風が語りかけてくるかのようだ。
耳かけの部分が良い意味で華奢に出来ており、
またハウジングが木製のため、
丁寧に取り扱う必要がある。

もっとも室内で聞くときは、
スピーカーかATならばアートモニターヘッドホンの出番であるので、
このイヤーフィットシリーズは中途半端な印象もぬぐえないが、
なんとも夢のある商品だ。

ATにはヴィジュアル面でも楽しませてくれる夢のある商品に今後とも挑戦しつづけて欲しい。