Ｓｈａｌｌ Ｗｅ Ｄａｎｃｅ？

このアルバムは、
ちあきなおみがテイチク時代に放ったオリジナル・アルバム『すたんだーど・なんばー』(1991.7.21)の復刻版です。

復刻に当たって、
新たにリマスタリングを行うことなく、
オリジナル・カット・マスターを使用したとのことですので、
当時の音そのものが再現されています。


いずれも―古くは大正６年、
新しいところでも昭和３７年といった―いわゆる懐メロと称される歌のカヴァーですが、
ジャズのスパイスを効かせ、
ダンスのリズムを強調したモダンな編曲がなされています。

大半はブルースですが、
「黄昏のビギン」は、
その名の示す通り、
カリブ海に浮かぶマルティニーク島に伝わるビギンという舞曲が源流ですし、
「スタコイ東京」や「星屑の町」はマンボから派生したドドンパ、
「遠くへ行きたい」はルンバ、
「宵待草」はワルツ、
といった具合です。


ビギンのリズムは一拍目とか二拍目でシンコペーションする４拍子のリズムで、
それだけでも難しいのですが、
この「黄昏のビギン」では転調のところで、
ジャズなどで用いられるブルー・ノート・スケール（長音階に第３・５・７音を半音下げた音を加えたもの）が使われていますので、
より難度の高い歌になっています。

ちあきなおみは、
この難しい曲を―薄く色を重ね、
合間合間からいろいろな色が顔を出すようにして―透明感漂うピアニシモの妙なる音色でもって、
正確に歌っています。

この曲が水原弘によって最初に世に出たのは1959年秋のことですが、
30年余りの歳月を経て、
ちあきなおみによってスタンダード・ナンバーとしての新たな生命を与えられたように思います。