自然現象と歴史事実の相関性・連関性の実証的検証.

本書のタイトルは『異常気象が変えた人類の歴史』とはあるが、
厳密に言えば『変えた』と言うよりも、
本書は『異常気象』と歴史的事実との相関性ないし関連性を、
実証的に検証するものと観るべきである。
『人類の歴史』を『異常気象が変えた』と観るのは、
暗黙裡に当該『異常気象』がなかった場合の“仮定的歴史”を前提としており、
歴史に“ＩＦ”論を持ち込むことになるからである。
かかる観点及び本書の実質的内容から観ても、
本書のタイトルはやや大仰な表現と言える。
このページの上の「商品の説明」には、
「寒冷化、
温暖化、
干ばつ、
火山噴火--歴史的エポックの背景に隠された気象の影響を読み解く驚きの文明史」との紹介があって、
本書のコンセプト（趣旨）をよく表している。
ただ私見ではあるが、
各トピック名にはその内容面からすると多少誇張気味のものや、
「気象の影響」と史実との相関性に拘泥する故に趣旨不明瞭なものも感じられる。
例えば第１７話（86〜90頁）では「漢字の違い」の発生と気象・自然災害との連関性が曖昧であったり、
第３１話（154〜158頁）ではショパンとサンドの破局は気象の問題と言うより、
ショパンの疾病（結核）と当時の社会性を要因と観るべきトピックが散見される。
しかしながら「氷河期から現代まで、
気候が人類の文明や歴史に与えた意外な影響を、
４０のエピソードで読み解く」と言う趣旨は一貫しており、
自然現象（気象・火山活動など）と歴史事実との一定程度の相関性・因果性を検証するスタイルはユニークであり、
各種のデータや研究成果を参照するなど実証的で著者の視点が興味深い。