留意点は感じるものの…
何か犯罪が起こるたびに騒がれる「○○が原因だ」「△△の影響だ」と言った「原因論」。
しかし、
実際にその原因が正しいかどうかもわからず、
また、
原因の除去というのも極めて困難な場合が多い。
それよりも、
原因を持っている人が、
実際に犯行をその場所・機会を除去して、
犯罪を起こせないようにしよう、
というのが本書の主張。
その論理と、
英米、
そして日本における取り組みを紹介する。
近年の日本の犯罪報道を見ても、
犯人の「普通でない場所」を見つけ出しては「これが原因だ」とすることが多く(しかも、
それが極めて意図的だったりする)、
それによっていわれも無い差別なども起きていると感じていた私にとって、
この「機会をくじく」という考え方は実に共感できるものだし、
正論であると感じる。
また、
「機会」を奪って時間稼ぎをすることで、
「原因」が自然と除去されることも多々有る、
というのも確かだ。
「原因」論よりもはるかに「機会」論の方が効率的だとも思う。
もっとも、
読んでいていくつか留意したいところも感じた。
まず、
この書の前提となっている「犯罪増加」というものであるが、
「認知件数」などは、
警察の方針などによって大きく変わるため、
それが正しいかどうかは疑問符がつく。
次に、
著者は「地域・コミュニティの強化」を強く訴えているわけだが、
それが強過ぎるが故に犯罪が起きたり、
また隠蔽される(絆が強過ぎるが故に犯罪行為も言い出せない)…などという事も考える必要があろう。
そして、
著者の主張で出てくる「割れ窓理論」。
これについては、
その効果を疑問視する声も多い。
そのようなところも考慮する必要があろう。
とはいえ、
全体的に見れば、
一読の価値がある書だと思う。
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