青春映画を鑑賞したかのような読み味

とにかくおもしろかった。
この一言に尽きます。


プロローグからエンディングまで畳み掛けるような怒涛の展開が続きます。

展開はものすごく速いですが、
そのために心情描写が疎かになるようなことは決してなく、
むしろ展開ごとに徐々に変化していく主人公とヒロインの関係が丁寧に描かれている作品だと感じました。


見出しには映画を鑑賞したかのような読み味と書きましたが、
ライトノベルらしくない一般小説のような作品という意味ではありせん。
こんな説明の仕方をすると偏見だと思われそうですが、
ラブコメ要素もラッキースケベもちょうどいいバランスで盛り込まれており、
そういった意味でも大変楽しめました。

映画のよう、
と感じたのは実写映像をイメージさせるような生々しく繊細で迫力のある文章表現と全体の構成からではないかと思います。


物語はとある農村に一人のコスプレ少女が迷い込むところから始まります。
主人公の少年は、
炎の魔法使いに気に入られ捕獲されたヒロインを救い出すため、
様々な脅威に立ち向かい奮闘することに。
ヒロインと出会い触れ合う中で主人公は何を思い、
どんな決断をするのか。
公園から危ないとされる遊具が撤去されてしまうような現代社会とは真逆の環境で、
少年少女たちはどんな可能性を見せてくれるのか。
と、
見所はたくさんありますが、
展開が激しくあらすじを短文で書くのは難しいので、
気になった方は是非実際に読んで欲しいです。


現実に存在するのでは？と思いたくなる小さな田舎で繰り広げられるのは危険で爽快なキャラクターたちが織り成すスペクタクルアドベンチャー。
まさにそんな感じの作品です。

特に後半の自動車レースのシーンでは激しいアクションの連続で夢中になって読み進めてしまいました。
また、
登場人物がみなエンターテインメントを正しく理解し、
全力で祭りを盛り上げようとする様はとても滑稽でした。


自称精霊種族のヒロイン、
火炎放射器を振り回す高校生や仲間と馬に乗って村の自警団を気取る小学生など登場キャラクターはみな個性的で魅力的。
まるでそれぞれが別の世界からやってきたかのような印象で、
混沌とした農村を見事に彩っています。