収録語数だけで辞書を選ぶことなかれ

現在、
書店で流通している小型国語辞典は多数あり、
収録語数だけを比べて辞書を選びがちだが、
語数だけで辞書の価値を判断してはいけないと思う。

三国７版の書評にも書いたが、
車浮代氏の『蔦重の教え』に登場する「紋日」ということばを調べたことがある。
「紋日」は「物日」の言いかえなのだが、
明鏡・集英国・新明解・新世紀ビジュアル大辞典には、
「物日」は載っていたが「紋日」は載っていなかった。
しかし、
三国と岩国には「紋日」と「物日」の両方が載っていた。

国語辞典の個性を語るとき、
「収録語数」「語釈」で比較することが多いが、
実は、
どのへんの時代の言葉が収録されているかという「収録語のレンジ（時代の幅）」を検討しないと片手落ちである。

岩国の収録語のレンジ（時代の幅）は、
きわめて広い。
だから、
言葉を引くと、
たいてい載っているというわけである。

岩国の表紙の薄紫の色合いと独特の手触りの柔らかさ（透明ビニルをかけていない理由だろう）は長期の愛用につながる。