宇宙論について洞察が深まる本

最初に一般相対性理論と場の量子論が本質的に手際よく説明されている。
質量がないフリードマン方程式が説明されているのは宇宙の始まりに関わりがある。
ネーターの定理では、
時間並進対称性からエネルギー保存則が導かれ、
空間一様性からは運動量保存則が、
空間等方性からは角運動量保存則が導かれるが、
インフレーションや加速膨張を引き起こすと考えられている暗黒エネルギーについては時空の対称性から保存則が導かれる。
暗黒物質の候補についても説明がある。
宇宙の始まりについて、
トンネル効果によるヴィレンキンの「無からの創造」、
振動宇宙、
カオス的インフレーション、
ブレイン宇宙、
エキピロティック宇宙を説明している。
ペンローズの特異点定理の直感的でわかりやすいきちんとした説明があり、
特異点を避けるために時空の最小単位を考える理論としてループ量子重力理論、
力学的単体分割理論を示している。
並行宇宙の立場から物理定数についても洞察が深まり、
マルチバースの立場からは人間が存在できる条件を科学的に検討している。
多世界解釈ではデコヒーレントについて先駆的論文からの明解な解説がある。