『世界でも珍しい』ことの意味

本書のタイトルには「世界でも珍しい」とあるが、
どれほどの「珍しい」ことなのか、
あるいは著者の揶揄なのか些か戸惑うところであるが、
「まえがき」に「……これこそが日本特有の『謝罪文化』なのだ。
こんな文化は少しも褒められたものではない。
」として、
「謝罪会見」という一種の「パフォーマンス」に対する国民の許容傾向に警鐘を鳴らす意図を込めたものだろうと理解した。
著者は右に続いて「……見逃してならないのは、
そこには実にさまざまな利害、
打算、
深謀遠慮が渦巻いていることだ。
しかも、
その背後に国家や巨大資本の影をうかがわせる場合も少なくない。
」と述べており、
やや誇張のある印象は否めないが取り上げている対象（事件）は確かに興味深い。


具体的な内容は、
証券会社の自主廃業の会見（1997年）、
単に会見だけでなく右廃業に至った背景の金融・経済事情、
注目されなかった事実関係について詳しい考察がなされている。
またそのヘアスタイルで話題となった（2003年当時）国会議員について、
秘書給与問題で自らのアイデンティティーたるヘアスタイルを変えながら、
その後別件問題で副大臣としての謝罪会見では元通りとなっていたことをアイロニックに取り上げている。


私が特に共感したのは、
大学生の美人局事件や学生の学外で起こした問題に関する大学当局の「謝罪」について、
「事件を起こした本人の責任の範囲と、
教育機関としての責任の範囲を曖昧にする…」と指摘していることである。
大学は学問研究機関であって、
学生らの（当該大学の勧奨する学問研究とは何ら関係のない若しくは当該大学が関知し得ない）学外行動に関する道徳教育・責任機関ではないはずである。
このような風潮が当たり前のように「謝罪会見」と言う名で、
その特有の「文化」が闊歩していることを著者が明快に批判するのは正論である。
取り上げた「謝罪」ごとに当時の新聞記事（写真）が附されており、
古い話題でも読み手の記憶を想起させ細かい工夫も小気味良い。
類書として『