法の建前と企業の本音

　有期・非正規社員との向き合い方、
「限定正社員」の長所と短所、
派遣社員の意味合いと行方、
国が企業に賃上げを促すことの不合理、
ホワイトカラー・エグゼンプションの可能性、
育児休業制度の無理と限界、
定年延長の功罪などなど、
雇用・労働をめぐる広範な話題をまんべんなく拾い上げ、
丁寧に解説している。
面白く読めた。


　読み取れた著者の基本的な構えは、
労働法がめざす政策上の理念と、
民間企業サイドの経済合理性に立った本音との対立、
矛盾、
葛藤を解説しつつ、
労働者の側に立つという労働法の大前提と同時に、
企業側の言い分にも相応の理解を示していること。
評者にはとくに、
第５章「政府が賃上げさせても労働者は豊かになれない」と、
第７章「育児休業の充実は女性にとって朗報か」が興味深く、
タブーに近い指摘も随所に出てきて、
その意味ではスリリングでもあった。
ただ、
ホワイトカラー・エグゼンプションに関する説明と解釈はやや抽象的で、
こなれていない印象もある。