討論というより、「言いっ放し」な居酒屋談義

本書は文学者・評論家である笠井潔氏と、
「永続敗戦論」を発表した政治学者白井聡の2014年の対談集。
日本の政治・社会・メディア・官僚システム・大学・科学技術の全てが劣化している。
これは、
”ジャパン・アズ・ナンバーワン”といわれた時代を経験した人々に共通した実感だろう。
この実感を「近頃の若い者は」といった老人の説教と世代断絶に終わらせることなく、
普遍化・理論化する作業が、
将来の日本社会のために必要な作業だろう。


本書は、
残念ながら、
観念的な居酒屋論議に終始し、
日本の留まらない劣化の構造を明らかにしたとはいいがたい。
二人とも、
どのような劣化がどの分野で起きていて、
その原因は何か、
という事実記述や分析をせずに、
「右も左もダメ」、
「敗戦を認めずに対米従属にのめり込んでいる」という観念的な主張に終始している。
また二人の認識は違う点もあるのに、
お互い異議を差し挟まず、
論点が深まらないまま終わる。
まるでSNS上の観念的な「いいね！」のやりとりを見ているようだ。
本格的な議論を避けるこのような知識人の態度こそ「日本の劣化」そのものではないのか。


本書のような、
論理抜きの主観に対して「～論」と銘打つのはもう止めていただきたい。