これからを“生きる”ということ―「真円的思考」を排却する

　　　
　2018年1月、
著者の平川克美さんの盟友、
内田樹さんが『ローカリズム宣言』を上木しましたが、
それに1月ほど遅れて本書が鉛槧に付されました。
前書は脱「経済成長」を訴え、
「定常(経済)モデル」へのシフトなどを主唱している訳ですが、
本書でも「等価交換」「競争原理」などからの超脱を立言しています。
同趣とまでは即言しかるけれども、
私が信を措くお二方が相次いで開鑿された所論の機縁や背景などに、
行き詰まりを見せつつある貨幣(市場)経済やグルーバル資本主義などへの反立が伝わってきます。
取り分け、
平川さんは実業の世界にも身を置いていたことから、
その理路には十分過ぎるほどの説得力が感じられます。


　当書によれば、
平川さんは会社を１つ畳み、
借財を返済、
「結局、
全財産を失った」(まえがき)そうです。
さらに同じ頃、
「肺がんの宣告を受け、
入院、
手術で、
右肺の3分の1を失った」(同前)ようでもあります(実は、
この辺りの経緯については、
平川さんのTWなどで、
私は何となく判っていました)。
それはさて措き、
まずタイトルともなっている「楕円幻想」ということに関して略言しておきましょう。
この言葉は文藝評論家花田清輝のエッセイから引用されているみたいで、
要は「焦点が2つある」という謂いです。
そして、
2つの焦点が１つになると完全な「円」になりますが、
数学的には「円」は「楕円」の特殊ケースです。