セットで何を読むかによって印象が変わる書籍

（評価が）難しい書籍だなと感じました。
その第一は、
書籍のなかでも言及されていますが、
経済学を基礎に現代美術の国際展を対象とした研究自体が、
少なくとも日本ではほとんど見られず、
この書籍自体がベンチマークになるからです。


ただ逆に言えば、
一読した時点で「これは素晴らしい」と手放しで褒められるような読後感は得られませんでした。
幾つか理由はあって、

１．経済効果の測定の議論は、
ある程度経済学が分かる読者を前提に書かれている。

　ここで書かれていることは、
恐らく経済学では基本的な枠組みを援用しているのだということは分かりましたが、
書籍柄、
美術に関心がある読者が手に取る可能性が高いことを考えると、
もう少し配慮があっても良いのではないかと感じました。
ちなみに、
私は学生時代美術の勉強をしていたというわけではありません。
ただし、
経済学も門外漢です。


２．メディアの分析ももう少し突っ込んで頂けるとより納得がいった。

　アートプロジェクトを通じた社会関係資本の変化を議論するにあたって、
新聞の紙面分析をしているのですが、
どこまで書かれたものが実際に社会関係資本に影響を与えたと信じられるのかに不安が残りました。
データベース化も恐らくされていない地域紙を丹念に追われた仕事自体は敬意を持ちましたが、
定量的な評価とは離れて議論するのであれば、
まだ対象とすべき資料群は拡がったのではと感じました。