超力作

著者はよくここまで調べたと思う。
読みながら遺族としての強い執念をまざまざと感じる。
私もあの日の夕方に日航機が消息不明になったニュースを知った後はとにかく各テレビ局の報道番組を食い入るように見ていた。
そして自衛隊員が射殺されたとのNHKのテロップを見た時は一瞬戦慄を覚えたものだ。
その後訂正の案内が入ったのでホッとしてその件については長年の間すっかり忘れていたが、
昨年インターネットでたまたま見つけた事故関連ブログにこのテロップの話が書かれていたので３２年ぶりにそのことを思い出した。
そしてこの本を読みながらやはりあの時の戦慄は何か意味を持っていたのだなと改めて感じている次第である。
但し、
著者の小田氏はこのテロップを自衛隊員に対する警告用にわざと流させたとしているが、
私には上司の命令を無視して救助を強行しようとした自衛隊員が実際に射殺されてしまったような気がしてならない。
小田氏は自説に関する証言をどこかでとっているのかもしれないが残念ながらそれについての記述はこの本の中には書かれていなかった。
ボイスレコーダーに関してはこの事故を事件とみなす複数の書籍が再び注目され始めてからその真実性をかき消すために意図的にそのタイミングで改竄されたものを公開することにしたのだろう。
実際緊急事態にもかかわらず異常発生後のコックピット内の会話が極端に少なすぎる。
また、
終始バックに一定のエンジン音が入っているものの他者との交信 (ACC, YOK, COM)やコックピット内の会話と全く重なっていない時でも何故か「音声無し」の注釈のついている会話や機内アナウンスも結構多い。
従ってエンジン音しか聞こえない時間帯には恐らく事件性を示唆するキーポイントとなるコックピット・クルー間の会話及び横田基地や追尾していた自衛隊機との交信がかなり含まれていたと思われるがそれらは全て削除され（緊急着陸の具体的なアナウンスも含めて）、
その代わりに真相究明のためのヒントとならないようなフレーズをポツリポツリと音声無しで適宜それらしく挿入することで事件ではなくあくまで事故であったかのように聞こえるよう工夫したのだろう。
いずれにせよ既に高齢になられた小田氏のこれだけの努力には頭の下がる思いがすると同時に、
生存者や遺族の方々が生きている間に勇気をもって真実を語る人物が一人でも現れることを切に願う。