「4Ｋ修復された名作。素晴らしい作品。」

　一流の映画人が全力を上げて怪奇幻想譚を撮るとどうなるかを示してくれた名作。

　戦乱の世に翻弄される二組の職人夫婦の物語に超自然的な題材を絡めて語ります。


　自らの財団でパウエル、
プレスバーガー『赤い靴』の修復をした事でも知られているスコセッシ監督の主導で撮影を担当した宮川一夫のアシスタントを30年以上務めた宮島正弘監修の下で行われた4Kデジタル修復版です。

　昔名画座で観た時より、
遙かに美しいゴミ、
瑕一つ無い画面です。

　悪戯に美しくし過ぎない様にも尽力され居り、
画面の細部が良く見えながらも暗い部分はちゃんと暗く見えます。

　着物や調達品の図柄や質感も明瞭に観る事が出来ます。

　幽玄な湖上のシーン、
寂れた若狭（京マチ子）の屋敷が灯りを点けると同時に魔法の様に美しく変化する様子、
そして全てを失って故郷に帰って来た源十郎（森雅之）と宮木（田中絹代）の伝説的な再会時の転換画面。

　海外映画賞受けを狙った強い日本情緒が感じられ、
ネオレアリズモ的な藤兵衛(小沢栄。
後の小沢栄太郎)と阿浜（水戸光子）の挿話も御座いますが、
前記源十郎、
若狭、
宮木の部分は文句無しに素晴らしく、
見惚れるばかりでした。

　音声も、
先に出た溝口監督の戦前作品「残菊物語」のＢｌｕ-Ｒａｙより遙かに唄や市場の雑踏の生活音が鮮明に聴こえ、
生々しい人々の息遣いが聴こえて来る様でした。

　
　私如きが今更申し上げるのもおこがましい限りですが、
決して難解な映画では無く、
　現代でこそ強く感じる二つの時代、
舞台となった戦国時代と映画が製作された日本映画黄金時代へのノスタルジーと更にそれを超えた情緒を充分楽しんで観賞出来る作品です。

　大いにお薦めです。


　【特典】
・マーティン・スコセッシ監督インタビュー。
監督と本作との出会い、
本作の素晴らしさ、
修復時の苦労話等。
9分14秒。

・修復前/後の画像比較。
左右に並べて見せます。
無音。

・劇場予告編
　【紙媒体特典】
・リーフレット。
レーザーディスクの封入特典に加筆した内山一樹氏による作品と溝口監督の解説。

・Ａ3版位の大きさの1953年当時の作品案内の復刻版。