天下を取った松下政経塾生の、世襲政治屋への宣戦布告書

　著者が、
なぜ、
あれだけ江戸時代を蛇蝎のごとく嫌っているかが、
この本を読めば分かります。
江戸時代の弊害が現在進行形で存在している、
それが「政治の世襲」だと断言しています。
私自身、
政治の世襲については、
はなはだ疑問に感じていました。
また、
仕事上政治家の子弟や世襲した政治家と出あう、
一緒に仕事をすることが多々あり、
やはり、
著者と同じ考えを持っていました。

　佐高信が世襲政治家を「苦労知らず、
世間知らず」と言っていましたが、
どういう構造で世襲が生じるか、
どのくらい世間知らずで苦労知らずなのか、
事例をあげて本書では細かく分析しています。
今までこのような政治の世襲に対し、
徹底して分析し、
NOと言った本は存在しませんでした。

　江戸時代の譜代大名と、
現在の東京育ちで出馬する時だけ、
お国入りする世襲政治家が酷似している事を書いていますが、
そのとおりと考えます。
私は佐倉市の在住ですが、
「義民惣五郎」の物語が端的にそれを語っています。
堀田の殿様は江戸幕府の仕事にかかりっきりで、
藩の行政にはほとんどノータッチでした。
米の収穫量が増え、
有る程度は成長期だった元禄以前の時期にこういう事件が起こっているのです。
東京しか知らず、
組織で働いた経験のない者に、
政治が勤まるでしょうか？
　その対極にいるのが松下政経塾生で、
そこ出身の野田佳彦が首相にならなかったら、
おそらくこのような本は出版されていないでしょう。
これは松下政経塾による、
世襲政治家への宣戦布告です。

　巻末に、
松下塾のことについて細かに紹介していますが、
完全に蛇足です。
そこは読み飛ばして結構です。

　この本は、
かなり著者の主観が入っています。
私は著者と同じような仕事をしていて、
間近に、
そういった方々を見ていて価値観が共有できるのでこの本を買い、
評価しましたが、
そうではない人にとっては著者の主観についていけないかもしれません。
また、
私は松下政経塾生に過度な期待はしていません。
ついでに言うと、
著者は地元の市長選に2回出馬し、
２回とも落選しています。
そのためか知りませんが、
今回の著書については、
公平ではないし、
分析も冷静さは感じません。