何者かたらんとして何事かなさんとする

何不自由ない生活に満足して無為に日を送る母親（小夜福子）を慊らなく思う娘（月丘夢路）は結婚してすでに数年。
何者かであろうとして離婚を決意する。
彼女の問題は何事かをなすことが何者かであるのではなく、
何者かであろうとして何事かなそうとする一人のノラであることである。
東京でよって行こうとする彼女の未来は開けそうにない。
分かっていてやらせる父親（山村聡）は太っ腹である。
実業家の父親にも元バーの女（新珠三千代）に無償で洋品屋をやらせる道楽がある。
こちらの女もパトロンに対して飾り物は嫌だと言い出す。
後ろ盾をなくして閉店するほかないだろう。
娘の夫（三橋達也）とかじかの研究者（三國連太郎）の若い男ふたりは情熱と行動力があっても資金調達力に乏しい。
金づるを確保できるかが勝負だ（今の世に置き換えるならベンチャービジネスとベンチャーキャピタルの関係といったところ）。
パトロンに不満な女とパトロン確保に四苦八苦する男ーー。
パトロンに不満な女たちというのがいかにも作り事めいている。