尾崎豊の“意味”を問われている
本書を通読して、
まず、
再認識させられたのは、
尾崎豊の神秘的とも言える、
最高と最低が入り混じった複雑怪奇な人間性についてです。


通常、
作品とそれを作り出した人格とは、
独立した別個のものであるはずですが、
尾崎豊の音楽に関して言えば、
彼自身の生き方、
考え方、
感じ方、
それらのものと作品とが、
余りにも密接に繋がっているように感じます。


つまり、
尾崎豊の音楽をより深く理解していく為には、
彼の実像を知ろうとすることが、
きっと助けになるのではないかと思います。


また逆に、
尾崎豊の音楽を聴くという行為は、
彼に少しでも近づこうと切望することでもあるのではないかと思います。


等身大の尾崎豊の軌跡を辿りながら、
あらゆるチープなラベルを払拭すべく、
ジャンルの枠を超えて伝わっていく普遍性を感じます。


尾崎豊という、
いくつかの形容詞を重ねるだけでは表現しきれない程に際立っている、
余りにも純粋かつ、
大胆かつ、
象徴的な存在は、
音楽業界そのものの構造、
音楽ジャーナリズムの問題、
ドラッグに至るまで、
深く沈澱していた様々な問題が、
白日のもとへ曝されているのも興味深いところです。


本文に関しては、
基本的に尾崎豊と音楽の関わりについて、
関係者へのインタビューやエッセイ、
レビュー等を通して、
彼自身の語りの部分を抽出して、
まとめたものです。


内容はもとより、
言葉遣い等も出来る限り、
そのままのニュアンスを生かすように、
心がけて掲載されていることが伝わって来ます。


尾崎豊没後四半世紀を迎え、
自戒と自省を込めて、
マスコミの一般的な傾向である宿命的に付きまとってしまうレッテルや世間の風潮に翻弄されることなく、
各自が自分自身で、
常に尾崎豊の“意味”を定義していく必要はあると思います。
尾崎豊 Forget Me Not (別冊宝島 2559)

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