音楽佳し、踊り佳しのミュージカル映画

　この日が来たことが信じられない、
というと些か大げさだが、
そう言いたくなるくらいに待ち望んでいたといえる
国内盤ディスクである。
公開４０年目。
１９７０年代というと、
もうこのてのミュージカル映画は少々流行らなくなっ
ていた感があるのだが（話題作は『エクソシスト』『ゴッドファーザー』『ポセイドンアドベンチャー』『タワーリン
グインフェルノ』『スティング』『ロッキー』･･･）、
質の高い音楽映画で、
面白い。

まず音楽がすばらしい。
シャーマン兄弟の作品のなかでも傑作だろう。
親しみやすい旋律と言葉遊びを折り込んだ佳曲
の数々。
編曲・指揮はアンジェラ・モーレイ、
まず序曲より見事、
シンデレラ父の葬列の一行と王子の帰還が雪山でク
ロスするのだが、
場に合わせた「Once I was loved」と「Secret kingdom」のかけ合いが素晴らしい。
「A bride finding
ball」をポロネーズやメヌエットにアレンジした舞踊曲もいい。
魔法のシーンを引き立てる華やかな曲もいい。

　マーク・ブロウ面目躍如、
お薦めは墓室で踊る王子とジョン、
王や高官たちのコミカルな踊り、
厨房の迫力ある群舞。

シンデレラと王子のワルツもきれい。
シンデレラが両手を広げ、
王子がホールドしているのが美しい。
１８世紀という設
定（墓室の「王子の墓」でわかる、
可笑しくて皮肉なシーン）に合わせたらしい舞踊が楽しい。
（レスリー・コリアが
どこに出ているのかご存じの方教えて下さい）。

　主演ジェマ・クレーヴン、
愛らしいのびやかな声。
リチャード・チェンバレン、
もともと歌う人だけれど（ヒット曲有
り）表現力が増し、
情感豊かなバリトン。
（今も現役でものすごくかっこいい、
細身の長身で声が若々しい）。
脇はＥ・
エヴァンスはじめ、
ケネス・モアやマイケル・ホーダーンなど重鎮が固める。
皆、
自分の声で歌っていて味がある。
おっ
と、
忘れてはならない、
イギリス随一の美人（悪女）女優マーガレット・ロックウッドの継母。
彼女の最後の映画作品な
のだ。
クリストファ・ゲーブルがお付き、
キース・スキナーも。