泥塗れでも美しい

この物語は、
金木研という主人公の魅力によって支えられた作品である。


人間を捕食しなければ生きていけない生物、
喰種の世界へ紛れ込まれ、

数々の暴力と苦しみと、
人間を喰わなければならない欲求と葛藤に苛まれ、

数々の敗北と、
仲間を救えない無力に彼は狂ってゆく。

中肉中背ぽよんぽよんの文学少年だった彼がマッシブになっているシーンは
セクシーカットだとかどうとか以前に酷く哀れである。


読者からすれば最終巻においても多数の謎が残され、
不完全燃焼である。

だが、
金木にとっては、
神目線で事情を窺い知れる読者以上に分からない事だらけである。

四方やウタや店長の言っている事が真実かどうかなど金木には分からない。

自分の真意さえも分からない。
自分のやっていることが間違いや自己満足かもしれない。

何も分からない中で、
間違っているかもしれないけれども、

あんていくと店長を助ける為に戦い、
人間も殺さない決断を下す。

その決断と行動は尊く、
美しいものである。

その結末がどれ程惨めな玉砕であったとしても。


『東京喰種』として完結した作品として★5の評価を下したい。