ユリゴコロとは

　予想以上の完成度で、
涙が止まりませんでした。
彼女は、
確かに人間的ではなかったのですし、
あってはならない存在だったとも言えます。
でも、
彼女の心を正しく揺り動かすものさえあれば、
彼女は人間的に変わることができていたし、
彼女のユリゴコロとして大切な存在になったもののためにのみ、
彼女は奪ってはならないものを奪うのではなく、
むしろ与えている事が怖いのです。
そういう自分自身の容赦のない深い感情を誰よりもわかっていないのが彼女自身であるため、
後になってそれに戸惑い後悔するのも彼女自身なのだと感じました。

　残酷な描写もありますが、
作品的にはとても静かです。
まるで面白さを感じない人もいるのではないかと心配になるほどです。
でも、
彼女を見ていると、
残酷なのは本当に彼女なのか、
それとも彼女を苦しめる間違った部分が目立つ世界のほうなのか、
少しわからなくなります。
愛する人の幸せを破壊しようとする誰かの命を奪うことは、
彼女にとっては専守防衛のようなものだと思えたので。