大野智だから成立したブラックファンタジー

このお話は、
新米の死神が、
人間と触れ合う中でその生きざまや死を見つめ成長していく過程を描いた風刺を含むブラックファンタジーです。
死神は、
人間寄りになりすぎて失敗したり、
悪魔に妨害されたりしながらも、
死にゆく者に寄り添い、
残された者を励ましながら正義感を身につけ、
やがて自己の存在意義を確立し成長していきます。
そして、
最後は、
自身の消滅を覚悟して尊い人間の命を救う道を選びます。
ラストには、
視聴者に夢を与え、
ほっこりと心に温かいものが残る感動作のサプライズがあります。


中田秀夫監督の映像美
演出チームを率いたのはリングの中田監督です。
映画の手法で制作された映像は壮大で心に沁みる美しさがあります。
特に１話のラストと５話終盤の映画『黄昏』をイメージしたシーンは必見です。


愛すべきキャラクター
純粋すぎる死神、
理路整然と悪魔理論を唱える魅惑的な悪魔、
キレてばかりいるパワハラ上司の監死官、
その監死官に隙あらば迫るセクハラ主任、
とユニークなキャラクターが揃っていて暗くなりがちなストーリーを楽しく笑って、
泣いてすっきりとした気持ちで観ることができます。


タブーを破った大野智の存在
『死神くん』は、
デスノートのもとになった名作ですが、
『死』というテーマ自体が業界のタブーであり、
実写化も困難を極め、
何度もお蔵入りになっていた伝説の作品です。
今回、
制作側が、
実現不可能な世界を映像化しようと踏み切ったのは、
稀有な表現力を持つ大野智の存在があったからだそうです。


フライングアクション
おそらく、
役者稼業一本の人には真似できないと思われる、
スムーズなフライングは、
１０代の頃から舞台で吊られることに慣れている大野智だからできた芸当だと言えます。
６話の逆さ吊りと７話の飛び降りのシーンは、
高難度の技であり一見の価値があります。


大野智の死神像
主人公の死神は、
大野智の演技力や身体能力だけではなく、
内に秘めた強く優しい人間性がもたらした死神像であったと思います。
いつか、
その時がきたら菩薩のように優しい眼差しの死神413号に出会ってみたいものだと心から思いました。