“ビタミンC”

　前巻より悪役として登場する田最環の持つスタンド、
『ビタミンC』によって苦しめられる主人公ら。
その過去が明らかになる最新刊。

　とにかくこの悪役の『田最環』がカッコイイ。
登場当初はぼそぼそと喋り、
不潔な印象を周囲に与えるなど到底『カッコイイ』キャラなどとは言えなかった田最環ではあるが、
この最新刊ではキレッキレである。

「それを君らに尋ねる前にごく当たり前のことを断っておく」、
「わたしにウソはつくなよ」

　そして本巻で同じくしてカッコイイのが、
過去編における主人公、
そして吉良吉影である。

　幼児体験によって『見捨てられる』ことに関して過度に恐怖を覚える主人公は、
かつて自分の命を救われた際にその命を救ってみせた吉良吉影の母・ホリーに対して、
聖母マリア――彫像『ピエタ』――から感じられるような慈愛を覚える。

　そして、
本巻において吉良吉影は、
その母によって救われた主人公の命を、
一度ならず救ってみせるのである。

　同時に彼は命を懸ける。

　古今東西の漫画において「誰かのために命を懸ける」人間は数多いるが、
このジョジョリオンにおいてはその切実さ、
意志の強さ、
切なさが滲み出ている。
この人間描写の繊細さは必見である。