今巻もテンポ良くパワフルなストーリーが続く

今巻も相変わらずテンポが良い。
出し惜しみが一切なく、
話はドンドンと進んでいきます。


今巻で、
司との戦いの第一ラウンドは終了です。
この戦いの中で、
表面的には偽悪的な態度を取っている千空だけど、
根は友達思いで心の優しい少年だということが描かれています。


千空は、
本心では司と戦いたくない。
司の思想は子供の頃の経験から生まれたものであり、
子供の頃の境遇を選ぶことが誰にもできないことを知っているから。

また、
自分の本心を大樹と杠に告げなかった点に、
自分が汚れ役を引き受ける覚悟と友情も感じました。
もっとも大樹は現実論を受け入れないという推測もあるでしょうが、
その推測が成り立つのは、
二人の友情が長いからです。


しかし千空の願いは、
司が杠を人質に取ったシーンで、
呆気なく打ち砕かれました。
仮死状態の人間だと分かっていても見た目は石像でしかないものを壊すのと、
生きて動いている人間に危害を加えるのとでは、
必要とされる覚悟の量が違いますから。

獅子王が妹以外の人間に心を開くとは思えないし、
その妹はすでに死んでいる。
だから彼の考えを変えることのできる人間は、
この世界にはいない。

そして完全に確信犯なので、
妥協は成り立たない。
心の中に、
甘えも慢心もない。
ただ、
妹を奪ったこの世界を破壊したいという思いがあるだけ。

このことを千空は、
嫌というほど思い知らされました。


そして司戦終了後、
千空の過去エピソードが始まります。
大樹が復活する前の千空が一人で黙々と文明復活に向けて根気強く頑張るシーンが描かれています。

全く環境が変わってしまった遠い未来の地球に目覚めても、
全く冷静さを失わずに状況を把握。
試行錯誤を繰り返しながら火を起こし、
食料の入手にも成功します。


最初から最後まで『千空は凄い!!』が描かれていますが、
彼の優しさと知力の高さがきちんと描かれています。
単なる『オレ強ぇ～』に終わっていないので、
主人公に好感がもてます。
応援したくなる主人公です。

無茶な理屈とハッタリを組み合わせる展開は、
ゆで理論的な面白さに満ちています。
この作品は、
キン肉マンのようなジャンプ黄金時代の漫画の、
正統な後継者です。