真剣に部活に打ち込み、真剣に恋をする季節…福井県の空の下で瑞々しく躍動する高校生たちの姿があまりにも眩し過ぎる…！！

「２．４３　清陰高校男子バレー部」でスポーツを題材にした小説に新風を吹き込んだ壁井ユカコ。

凄まじい熱量の込められた２ｎｄシーズンを読み終えてから「３ｒｄシーズンはまだなのか…」と首を長くしてたら
いつの間にか発売されていたのが２ｎｄシーズンで清陰高校と８０ページに渡る大激闘を演じた
福蜂工業高校の名を冠したこの一冊。


2015年から2016年にかけて「小説すばる」誌で発表された短編三本とちょっと長めの書き下ろしエピローグ一本で構成。


「強者の同盟」
主人公は福蜂工業高校のバレー部２年・高杉潤五。

１８８ｃｍと恵まれた体を持つ潤五だったが、
ある日監督の畑から呼び出しを受け
センター（ミドルブロッカー）へのコンバートを打診される。

中学時代からエースポジションであるレフト（ウイングスパイカー）だった潤五だったが、

福蜂工業には中学時代一度も勝てなかったライバル校出身の絶対エース三森統がいた。


畑からは「センターはチームの壁やぞ」とその重要性を説かれるも、

心の揺れが収まらないまま部の面々と帰路に就いた潤五は
同じ中学出身で今では福井の女子テニスでは女王と呼ばれる赤緒梓と再会する。


暫く疎遠になっていた梓は三村を含むチームメイトの前では妙に馴れ馴れしく絡んできたが、

二人きりになった途端、
今の潤五は牙を抜かれた様だと言い放ち
「梓の仲間は強い子ぉらだけで良い。
負け組は梓には釣り合わん」と
潤五の心の揺れを見抜いたかのような厳しい言葉を言い放つが…

ラノベだとリア充＝冴えない主人公をバカにする教室の中心に居座る鼻持ちならない連中、

みたいな描き方になる事が多いが、
その鼻持ちならない態度・自信に満ちた姿の裏に何があるか？
…といった部分が描かれる事は非常に少ない。


本作は中学までの絶対的なポジションを失いつつある潤五が再開した同級生・梓の鼻持ちならない言葉で
読者を「ガツン！」と殴りつける所から始まるのだけど、
そこから語られる「強者たらんとする者」の