悲運の革命家・トロツキー。

トロツキー（1879ー1940）はロシアの革命家で、
1917年のロシア革命時にはレーニンとともに権力を掌握し、
新しい国家の要職を歴任しました。

しかし、
1924年にレーニンが死去すると、
ソ連共産党書記長・スターリンが独裁権力を行うようになります。
トロツキーは1928年に国内への追放措置、
翌年にはソ連自体から国外へと追放、
1932年には市民権まで剥奪されます。
これ以降のトロツキーは国籍剥奪者として、
トルコ・フランス・ノルウェーでの亡命生活を余儀なくされます。


本書はこうしたノルウェーでの亡命生活中に、
スターリン政権下のソ連を変革する目的で書かれました。
身分・階級の完全な廃絶を目指した労働者政権であったはずのソ連が「幹部がすべて」を決する官僚国家となり、
一部の官僚に富と権力が集中することになった事態を、
舌鋒鋭くトロツキーは糾弾しています。


本書の脱稿直後の1936年8月、
モスクワではトロツキ―の支持者を粛清するトロツキー裁判が行われ、
支持者たちは多数銃殺されます。
この裁判は国際的に波紋を呼び、
哲学者・デューイを中心とする国際調査委員会が設置され、
トロツキーは無罪を訴えます。
しかし、
こうした奮闘もむなしく、
スターリンが亡命先のメキシコに送り込んだ暗殺者により、
1940年にトロツキーはこの世を去ります。


なお、
本書原文はフランス語で執筆されており、
日本では1938年に荒畑寒村が英語版から重訳したものが出版されました。
ロシア語版は1971年にようやく出版を許されています。
ロシア語版から日本語へ翻訳をしたものはは、
以下の2種に限られているようです。


①『ソ連はどこへ裏切られた革命』（藤井一行訳、
窓社、
1988年)
②『裏切られた革命』（藤井一行訳、
岩波文庫、
1992年)