罪を憎んで偉業を憎まず。

夏に出たNumber「甲子園最強打者伝説。
」はここ数年内のNumberにおいて個人的にシビレる一冊だった。


それをさらに掘り下げた今作。
1983年、
高校球界に綺羅星の如く現れた清原和博という怪物スラッガーに敗れ、

魅せられ、
そして中にはその後の運命をも変えられた、
元高校球児達の声を訪ねて集めたものである。


登場する大半の元ライバル達は、
現在既に球界から遠い場所に身を置きながらも、
あの日あの時あの男と
同じ場所で過ごせたことへの思いを、
たとえ負けたことさえも我が財産のようにほろ苦く語る。
中には
この30余年、
彼と対戦した過去への思いを封印したまま頑なに語らずここまで来たという元球児さえも。

大打者と真っ向勝負し、
敗れた者達のありのままの思いが淡々と展開されていく。
淡々としているのに、

彼に対する熱い熱い思いで誌面全体が溢れている。


常にストイックに野球に取り組んだPLのもう一人の「K」。
そして、
豪放磊落、
思うままに生き、
大記録を
嘱望されながらも無冠でキャリアを終えることになる、
主人公「K」。
決して満点では無かったプロ生活、

その後の凋落で殊更コントラストが強調される、
もう戻ることのない遠い夏のあの輝きがより一層光を増す。

この一冊にはあの夏を懐かしみ、
そして憐れむような男達のそんな声が集約されているのだ。

アツかったあの夏、
世代は違えど二人の怪物に魅せられた人ならば、
是非一度手に取って欲しい一冊。


web Numberにこんな件がある。


『彼らの記憶の中にいる清原は怪物であり、
泣き虫だ。
傍若無人であり、
義理人情に厚い。
つまり、
強くて、

弱い。
そこに人を惹きつける「体温」がある。
きっと、
そのせいなのだろう。
鮮明に浮かび上がってくる、