「直江信綱」誕生

昭和35年の安保闘争を背景に、
織田との本格的な戦いに備え、
夜叉衆の面々はレガーロから離れていく。
彼らのあいだでの美奈子の立ち位置が定まり、
そして本編で「予告」されていたとおりに、
直江の彼女に対する態度が一変する。
さらに村内千造が、
満を持して登場。
昭和編はあの「事件」へ向かって、
一気に加速した感がある。


これまで以上に「見せ場」が多い。
景虎に対して突然獣性を剥き出す直江、
それによって暗い情念を引きずり出される景虎、
ふたりの心情の吐露を聞きながら、
どうすることもできない晴家──。
彼らの一言一言が、
本編の各場面と呼応して、
いっそう重みを増す。
終始緊迫感に満ちた状況のなかで、
長秀や高坂の繰り出す皮肉や毒舌は、
一種の清涼剤の役割を果たしている。


景虎への愛憎に苦しみもがき、
狂気に陥っていく直江に、
もはや「尚紀」の影はない。
我々のよく識る「橘義明」に最も近い「直江信綱」の誕生である。