抒情性と日常性との相克

　ペーパーバックは３８行なので、
はじめやや字が細かいと感じるかもしれません（読み進むと慣れます）。
２３３ページに１１編の短編が収められていて、
他に著者自身による３ページちょっとのはしがきが付いています。
総じて言えば単語に難しいものはなく、
文章もおおむね明快です。

　１１編の長さは、
５ページから３５ページのものまでマチマチで、
浅学非才を棚に上げて言ってしまえば、
出来栄えもマチマチです。
他の多くの作品集と同じく、
若くはない女性が主人公で、
大事件が起きるわけでもありませんが、
見事な筆さばきを堪能することができます。

　やや清明な抒情性に欠けるものがあるような気がするので、
余計なお世話ですが、
はじめてこの作家を読もうとしている人には、
先ず別の作品集をとお勧めします（著者自身の思い出話を色濃く反映した作品があるので、
どっちみち何れは読むことになるとは思いますが）。