グレープフルーツの続編

本書は2013年にオノ・ヨーコさんが出版した『エイコーン』の邦訳版になります。
翻訳はロンドン在住の越膳こずえさん、
帯には吉本ばななさんの推薦文があります。
『どんぐり』という幾分風変わりな、
しかし日本人には非常に馴染みある木の実をタイトルにしたものなので、
特に誰が書き手であろうと書店でいったん目にしたなら思わず手にしてしまうであろう地味ながらも存在感のある空色に包まれた一冊になっています。
小ぶりで程よい厚みを持った目次やページ数の入っていない書物なので、
ちょっとした空き時間があれば気軽にどこからでも読むことが出来ます。
最初に捲ったときに飛び込んできたのが、
彼女が1964年に出版した『グレープフルーツ』と同じ世界観を持つ言葉でしたが、
序文によれば現代社会に向けて同路線の出版物を制作した旨が紹介されていて、
この過去の作品を知っている方にはどういう内容物かを理解するのは凡そ簡単に思われます。
彼女の82年という人生経験を集大成した、
実に半世紀振りとなる新たなコンセプチュアル・インストラクションとドローイングの書物です。

それ以外の方に改めて紹介するとすれば、
オノ・ヨーコさんの点描によるイマジネイティブなドローイングを挿絵にした言葉による行動を指南する指示書でまさに読者参加型の芸術と言えます。
そういった本来の意図から離れても、
内容はナンセンスな頭の体操を伴った詩集のようでもあり、
前衛的で刺激的な格言集のようでもあり何でもありという人間の想像力の贅を尽くした、
なかば自動書記のようにオノ・ヨーコさんという一人の芸術家から綴られる言葉の花束なのでまだ彼女の作品をよく知らない方でも簡潔に言葉を使った芸術として新鮮で楽しめると思います。