筆者の意図通りの本 残念な店の現状を考えると全盛期が懐かしい

香港の広東料理の縮図をYung Keeに見、
それを日本人にわかりやすく示したいとした筆者の意図は見事に達成されている。
迫力ある写真と簡にして要を得た文による料理の紹介と、
香港の食シーンを切り取ったコラム、
店のストーリーなどがバランス良く配置されている。
典型的な個でありYung Keeを通して全体、
香港の食シーンをうまく説明している。


メモ
近年香港ではファミリービジネスのお家騒動が頻出しているらしい。
例えば、
福臨門の分裂騒動は日本の店名が変わったこともあり、
よく知られているだろう。
残念ながらYung Keeも、
本書で語っている当時の社長（創業者の長男）が弟と骨肉の争いを繰り広げ、
長男が亡くなった後もそれは続き、
2015年11月に最高裁判所に相当する終審法院での判決が広く報じられた。


私自身は近年Yung Keeを訪れていないが、
ミシュランで星を失ったままであるなど評判は芳しくないようだ。
本書が全盛期のYung Keeを収めていることは救いに思える。
Yung Keeの経営がどうなるかは確定していないが復活を、
創業者の父は、
祈っているだろうなあ。