「骨考古学」と「古人骨」から紐解く日本人の淵源と歴史.

本書の著者は「先史人類学」、
「骨考古学」の専門家で、
長い研究履歴と臨床（遺跡・墓跡などの発掘調査）経験のある方である。
本書はかかる著者の臨床・発掘調査経験と研究結果に基づく、
先史時代からの『日本人』の起源・歴史論である。
著者も本書で述べているが、
有史即ち文字的史資料を基本として時間軸に沿った歴史イベント・エポックを辿る通史ないし史論（通史）とはやや趣旨が異なり、
基本的には先史時代（概ね旧石器時代から弥生時代後期・古墳時代末期まで）を対象とした、
発掘に基づく「古人骨」から読み取れる科学的調査結果の歴史論、
別言すると「骨考古学」からの日本人起源への歴史的アプローチと言って良いだろう。
そうすると自ずから遺跡・墓跡の調査の物理的限界（旧石器時代から新石器時代・縄文時代）については推測に基づく考察が否めないが、
著者はできる限り乏しい「骨考古学」的史料（「古人骨」）ほか各種の情況資料などを駆使しており、
無理のない合理的な推論を展開しているのが顕著である。
本書の特質は、
まず徹底した「古人骨」の科学的（実証的）分析（ＤＮＡ解析含む）及びマクロ的な古地形、
地球環境史的な研究結果に従い、
これまでの「港川人」（旧石器時代）を日本人起源論から切り離して別系統であることを示唆し、
日本列島の旧石器時代人が「広く東アジアの大陸部から」集まったもので、
これらが「混和融合」して「縄文人」を形成すると推論し（第１章〜第２章１節）、
これを前提に論を進めていく。