昭和の傑物

誰もが知っているサントリーという会社は不思議な会社である。
つい最近まで、
非上場であり、
創業者一族が交代で社長を続けて来たが、
鳥居家と佐治家の二つの姓がある理由も、
この会社にとって「ビール」の持つ意味も、
一般にはそれほど知られていなかったのではないか。

そんなサントリーの二代目社長を縦糸に、
異彩を放つ開高健の関わりを横糸に、
見事に紡いで二人の生き様とサントリーという会社の近代史を描いた、
極めて印象深い一冊である。


新しいことへの挑戦を「やってみなはれ」と背中を押す企業風土は、
どういう場面でどのように育まれて来たのか、
「マッサン」で一躍有名となったニッカの竹鶴政孝と初代社長の関係はどのような関係であったのか、
サントリーの広告は何故進歩的だったのか、
サントリーの二代目社長は何故「佐治」姓となったのか、
サントリー美術館やサントリー・ホールはどのように生まれたのか。
これらの問いに対して、
本書は答えてくれる。


昭和40年代、
50年代のサントリーの広告は、
他の広告とは一味違う趣があった。
それは開高健、
柳原良平、
山口瞳といった才能による処もあったと思うが、
大阪財界最後の「大旦那」がその異才を使う度量を持っていたことにも起因しているのではないかと思われる。

昭和を駆け抜けた傑物たちの臭いを感じさせる、
サントリーのCMが懐かしい。