帝国主義とは興亡なり(本文より)

幸徳秋水（1871-1911年）は、
明治時代のジャーナリスト、
思想家、
社会主義者、
無政府主義者である。
幸徳を処刑したい明治政府(国家権力)のでっち上げで大逆事件の首謀者とみなされ死刑になったとも言われている。
この本は、
社会主義者でもあった幸徳が理想とした、
自由、
平等、
博愛(平和)について書いた随筆か散文を集めた本となっている。
原文の文語文を口語文に訳し読みやすくなっている。
明治34年作。
帝国主義とは、
戦争へと突き進もうとする考え方、
政策のことをいう。
幸徳はこれに強く反対した。
「帝国主義 (岩波文庫)」も出ているので読み比べてみたい。
現在の日本は戦闘機を米国より購入し着々と軍備拡張を行っているようなので、
軍備についての文を引用する。


【岩波文庫】
軍備を誇揚することを休めよ、
徴兵の制を崇拝することを止めよ。
我は兵営が多数無頼の遊民を産出することを見たり、
多くの生産力を消糜することを見たり、
多くの有為の青年を蹉跌せしむることを見たり、
兵営所在の風俗が多く壊乱せらるゝことを見たり、
行軍沿道の良民が常に彼等に苦しめらるゝを見たり。
未だ軍備と徴兵が国民の為に一粒の米、
一片の金をだも産するを見ざる也、
況んや科学をや、
文藝をや、
宗教道徳の高遠なる理想をや、
否な唯だ之を得ざるのみならず、
却て之を破壊し盡さんとするに非ずや。


【光文社古典新訳文庫】