待望のパリヤ編!
待望の第8巻、
冒頭に前巻のアニスのお話として1話、
アニスのエピローグ編といった感じです。
そして第5番目の乙嫁は表紙でもお分かりの通りおそらく待ち望んでいた方も多かったと思われるパリヤ、
少し焦った表情が心配ですが満を持しての登場です。
根は優しくて素直なのにそれゆえに自分の気持を表現するのに不器用で誤解されたり、
損をしたり、
必要以上に自己肯定感が低かったり、
そんなパリヤに好感を持ちなんとかしてあげたいと歯がゆい思いをされていた方も多かったのではないかと思います。
第2巻のアミルとの出会いで登場した時から彼女もいつか乙嫁として描かれるのだろうなと漠然と思いながらどんな風になるのだろうというのはある意味楽しみでもありました。
ネタバレになるといけないので展開の詳細には触れませんが、
パリヤの性格をご承知の方には微笑ましくもまどろっこしくてうーんとい感じになりますね。
でも本巻ではパリヤをはじめとする各キャラの表情が実に豊かでいきいきとしていて、
作者がパリヤをはじめとして作中人物に愛情を注いで描いていることが実感でき、
それが作品の魅力となって読み手を引付けることになるのだと思いました。
これは作者の既作「エマ」「シャーリー」とも共通する森作品独特の魅力だと思います。
また、
うまいなあと感心するのはシニア女性のキャラとしての使い方。
本作品ならバルキルシュお婆さま、
「エマ」ならケリー・ストウナー、
ここぞという場面での存在感の描き方は絶品だと思います。
そして第2巻で描かれていた布支度のお話が本巻でも主要なテーマになっていて思わず第2巻を取出して読み返してしまいました。
この「乙嫁語り」、
19世紀の中央アジアという我々の日常ではなかなか縁遠いエキゾチシズムあふれる設定にBrideというある意味華をもった存在、
それが作者の執拗ともいえる緻密な画力で描かれた時点で作品としての成功がすでに約束されていたといえるのではないでしょうか。
そしてひとつの物語のなかで夫婦愛、
友情、
親子や兄弟の絆、
悲劇、
喜劇、
スペクタクル、
とさまざまものを織り込みながらそれらが違和感なく調和しているのは作者の筆力のなせる技なのでしょう。
作者は自分の描きたいものを描いているだけと言っていますが。
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