横浜　港署に憧れて

　あぶない刑事を幼稚園時代に観て育ったオッサンのレビューですので、
今風でスタイリッシュなレビューをご覧になりたい方はすっ飛ばして下さい。

　毎日毎日、
日が暮れるまで車道路肩の細かい砂を集める仕事に勤しんでいた幼稚園の頃、
働き過ぎの自分を癒してくれたのは、
当時としては極めてステキだった刑事ドラマ『あぶない刑事』でした。

　登場人物たちが署内の談笑の時間に必ず手にしている謎の器、
当時の自分が普段酷使しているクマさんのプラコップでも、
祖母が使っている艶かしくいい仕事感のある茶碗でも、
父が使っていた有難い呪文の書かれた湯のみ（後に魚の漢字だと判明）でも、
お客様にだけ用いられる金彩入りのカップでもない、
実にミステリアスな容器に魅了されました。

　時は流れて、
高校に入学した私は、
業務用食材店で奇跡の再開を果たします。
そうです。
それは、
棚に軽くホコリをかぶりながらも端然と威厳を放つ日本デキシーさんのインサートカップF型ホルダーでした。
「嗚呼、
強く願えば叶うのだ」16歳のわたしに日本デキシーは教えてくれました。

　図書費として親から貰っていた僅かな小遣いは即座に、
「図書の定義が明示されていない以上、
これは当方の認識としては図書である」と脳内で強弁し、
図書費をホルダーとインサートカップにメタモルフォーゼして以来、
高校卒業まで、
コーヒーを飲む度に快適な妄想ライフを楽しめるあさっての方向に充実した日々を過ごしました。

　大学に入って地元を離れたあたりで、
インサートカップF型ホルダーとも、
一時離れましたが、
先般自分の会社をこしらえた際に、
いの一番に買いました。

　中身はコーヒーと紅茶、
緑茶から砕いたチキンラーメンまで、
相手は嫌な取引先から友人まで実にマルチロールです。

　使う際に、
手のひらで押しこむ必要があるので、
酷い銃撃戦の後で何度手を洗っても仲間の血が取れない気分の時や、
手がエイリアンのギトギトした何かで汚れている様な時は、
使わない方がいいかも知れません。

　ボタンを押すだけで、
カップが出てくるカップディスペンサーも買い増ししてコーヒー装備の拡充をしました。

　「これだけの装備を１Kのマンションに導入して、
一体何がしたいのだ？これが憧れのSOHO