技術的内容が書き連ねられたものではないが、技術者が読んでも大きな充足感が残る。むしろ一般向けの未来社会書。

本書は、
エクサスケールコンピューティングに関する技術的内容を詳細に解説するものではない。
従って技術者や研究者などがそうしたものを期待して読み始めると違和感を覚えることになる。
冒頭部分でそうした説明も一定範囲で行われるが、
大半の内容は次世代スーパーコンピュータ開発の必要性・重要性を一般向けにも理解出来るように説くものである。

またそれによって近未来の我々の生活や社会が、
どういったものになり得るのか、
どう変えていくことが可能であるのか、
という観点で全く新しい社会的ポテンシャルを描き出し、
そこに我々の将来への眼を大きく見開かせてくれるものである。
その未来は例を見ない程に鮮烈なものであり、
ややユートピア的ではあるのだが、
確かに実現させることが出来るかもしれないと十分に認識させられるだけの広範な萌芽的実例の多数と、
合理的な説得力を持つ。

技術者である自身は、
途中で技術的内容が限られることでやや違和感を覚えたが、
読了後はむしろ技術者としての新しい社会的視点を得られたことで、
大きな充足感が残った。
自らの技量によって、
非常に近い将来に我々自身の未来を変えていくことが確かに可能なのだという実感を持つことができる。

一方で技術に明るくなかったとしても、
一部の技術的説明を読み飛ばせば、
書かれている鮮烈な内容は多くの一般の人々が理解し、
共有出来るものであろう。