コンパクトな「近代ヨーロッパ史」

　「世界史」または「西洋史」といった題名の本は比較的多く見受けられるが、
時代と地域を限定した「近代ヨーロッパ史」のそれは少ない。
その中で、
本書は手軽で、
かつ読みやすいものである。

　
　本書は、
１章から終章までの１６章から成り立っている。
副題に「世界を変えた１９世紀」とあるが、
近代ヨーロッパを理解するにはさかのぼる必要があるため大航海時代から始まっている。

　
　本書の特徴は、
まず著者の視点で書かれているのですっきりして読みやすい点である。
概して通史の記述は、
教科書のような事実の羅列であるため途中で読み飽きてしまう。
だが、
本書は著者の考えが所々あり、
ただ読み流すだけのものではないので面白い。
次に、
政治、
経済、
社会、
科学技術など多くの分野を扱っている点である。
他の本もそのような領域を扱っているが、
分量が多くなって要点をつかみにくい。
その点本書は、
網羅的に全ての歴史的事象を扱っていないものの（そのような本は存在しないが）、
１人の著者によって内容が選定され、
かつ要点がつかみやすい。

　
　ただ、
詳しく調べたい、
知りたいという人には物足りないと思う。
「近代ヨーロッパ史」の要点を手軽に、
早く理解したい人にとって本書は良いと思う。