タブーに切り込む犯罪学。ロンブローゾは復権するか。

著者はペンシルベニア大学教授。

興味本位の内容ではなく、
しっかりした学術研究である。

と同時に、
一般読者にも読みやすくなるよう工夫されている。


犯罪の原因を生物的要因（とくに遺伝的要因）に求める説は、
ロンブローゾに始まるが、
人種差別や優生学をほうふつさせるので人気がない。
というより、
そうした考えに触れることすらタブー視されているのが現状であろう。

しかし最近の脳科学や神経医学の発展により、
あらたな研究知見が得られつつある。

本書はその全体像を分かりやすく説明している。


誤解や批判を招きやすい分野であるため、
著者の筆はとても慎重であるが、
決して腰が引けているわけではない。

生物学だけでなく、
法や社会制度にも目配りした幅広い立論になっている。

翻訳も読みやすい。
ひろくお勧め。


表紙カバーの鮮烈な色合いとデザインが、
きわもの的印象を与えているのはちょっと残念。