手っ取り早く内容を見るのにちょうどいい

『21世紀の資本』は分厚いので読むのに気乗りしないが、
常識程度に内容は把握しておきたいという人にちょうどよい本です(ちなみに日本語訳は『21世紀の資本』であって"論"は付きません)。


巻頭で、
『21世紀の資本』を読んだ人にも、
読まない人にも内容を簡潔に整理！と謳われているだけあって、
明確に要点を抑えている印象です。
しかも『21世紀の資本』の順番通りに解説されているようです。


本書の構成は非常によくできており、
5つの章立てに80のトピックを設け、
すべてのトピックが右ページは解説文、
左ページは図解となっており解りやすく、
ポイントとなる解説文にはご親切に赤線を引いてくれています。

トピックは疑問符付きが多く、
その答えに赤線が引かれていたりするので、
内容の把握度が増します(簡潔なため 決して100%理解できる、
理解度が増すということではありません)。
例えば「1970年代以降の構造的進化とは？」というトピックの赤線は「徐々に民営化と公共財産の民間移転が進んできたこと」となっています。
この体裁がすらすらと読み進めるのに助けになっています。


ただ、
どこまでが原著の解説で、
どこからが筆者の補足なのか(あるいは付け足しはないのか）は曖昧です。

しかし、
巻末でピケティ来日時の講演内容を俎上に載せているのはためになりますし、
ピケティの指摘はなかなか核心を突いた内容です。
また『21世紀の資本』への批判的な学者の意見もまとめられています、
さすがにこれは原著にはない内容でしょう。
このように日本への言及や批判されているポイントも書かれているので、
原著以上に全体を俯瞰できるのもよい点です。
とてもバランスが取れているのですが、
第1基本法則(α＝ｒ×β）第2基本法則(β＝ｓ／ｇ)については消化不良でもう少し説明の欲しいところでした。