素敵な大人の歌手を偲びながら　あまり知られていない名曲たちに囲まれて

尾崎紀世彦さんが69歳で逝去されてから半年が経ちました。

生前は時折テレビでその素敵な歌唱ぶりに感激するだけで、
熱心な聴き手では無かったのですが、
そのずば抜けた日本人離れした歌唱力にはいつも感心して聴いていました。

尾崎紀世彦さんのような優れた歌手が、
その実力とは比例せずに、
本来占めるべき位置にいないということが不思議でなりませんでした。
日本のショー・ビジネスの世界がまだまだ成熟していないという度合いが分かるほどです。


高い音域まで声質が変わらず、
透明で、
かつ男らしい音色で歌える希有な方でした。
輝かしい声とは尾崎さんに与えられるような形容詞だと思っています。

このアルバムでも、
バラード歌唱によりその卓越した歌唱を聴くことができます。

「マリア」「Tonightさよなら」など、
コアなファン以外には多分ほとんど知られていないのでしょうが、
情感豊かな見事な歌いっぷりでした。
流石です。


「星の王子さま(パラマウント映画『星の王子さま』主題歌)」のたっぷりした歌唱を聴くだけで癒されますし、
大人の歌手とはこういうものだ、
という名刺代わりの歌唱でしょう。
どこまでも遠くまで伸びていくような歌唱の巧さに聴き惚れてしまいます。


「My Better Life(ビーバーエアコン 冬のキャンペーン・ソング)」での声の温かさは歌い手の気持ちの温かさの表れでしょうし、
CMプランナーもそこに着目したのは当然だと思いました。


「明日への扉(CIC映画『アーバン・カウボーイ』主題歌)」や「愛の追跡(第1回広島平和音楽祭参加曲)」、
「愛だけあれば(松竹富士映画『南へ走れ、
海の道を! 』主題歌)」なども実に素敵な曲たちでした。
当方が知らないのは聴き方が足りないわけですが、
世間ももっと評価しないといけません。
日本の聴衆の未成熟な音楽度が問われているような気がしました。


「あなたのすべてを(佐々木勉カバー)」を聴いて、
やはり歌心のある人だと再確認しました。

日本の名曲を尾崎さんの歌唱で聴きたかったです。
まだまだ歌い続けて、
成熟した歌を聞かせて欲しかったです、
心から。