画家が見て描いた戦争~真っ新な目で見て読むことで必ず心に伝わるものは何？

中身をめくることもなく、
表紙とタイトルで選んだ本。


現代美術の世界で活躍する美術批評家と美術家（ともに50代前半）の対談形式で、
大東亜戦争当時に国のお声掛かりで、
大日本帝国の聖戦を後世に伝えるために名だたる画家たちが描いた戦争画とその背景が紹介されていく。


あくまで美術という観点が主眼であるが、
歴史や政治また戦後から現代に至る美術史にも話が展開されるので、
読み手にも相応の知識が求められる（私は美術音痴なので、
そちらの方面の議論には難儀した）。

しかし、
百聞は一見に如かずとは正にこのこととばかりに示される戦争画の数々からは、
様々な思いや考えが浮かんできた。

単純な戦争批判や平和や反戦の肯定は、
本書にはない。
戦争をめぐる議論が大きく取り上げられる今だからこそ、
敢えて定番の観点を外して、
岡目八目的な観点を得ることで、
読者も手垢のついたステロな認識とは違う、
自分なりの戦争観・ニッポン観を得られる。
そう思える方には、
150頁で2000円の本書だが、
決して損はないだろう。