やや期待外れ。

経済と市場は私たちの生活の最も基礎的な部分を支えているし、
ひきこもりやニートの社会問題もどうにかして解決したい。
福祉社会の今後も考えなければならないし、
経済的弱者が職業訓練を受けて社会のなかで居場所を見つけられるようにしなければ。
はたまた原発事故後のエネルギーと環境問題も早く突破口をみつけなければならない。
私たち有権者と政治の現場をつなぐメディアは、
本当に真実を伝えているのか?…

本書はこれら日本が抱える難題を解決するための突破口を読者に提示しようとするものだ。
編者と執筆者はみな若く各分野の気鋭の人物たちであり、
学者というよりは実践的な専門家で、
かつポジティブな議論を展開しようと心がけているのが印象的。


本書を読んで私が秀逸だと感じたのは、
経済学の安田洋祐氏と政治のデータマッピングを行っている菅原琢氏の章。
特に短い紙幅でゲーム理論をわかりやく解説した安田氏の力量には驚かされた。
一方で菅原氏のプレゼンは面白いのだが、
短い紙幅にたくさんの内容を詰め込み過ぎている印象。
何か一つ、
例えば若者の憲法改正賛成率が高いからといって若者が右傾化しているわけではないというトピックなどをじっくりと解説してくれた方が読者としてはデータ政治なるものの魅力がより理解できたのではないか
。


以上の章を除いて、
全体として提示されている内容は凡庸。
実践しているところに意味があるのかも知れないが、
これでは難題は片付かない。
それぞれの活動家の人物紹介の域を出ていないのではないだろうか? シノドスなるものは、
朝生出演者の内輪談義のようなものというこれまでの印象を何ら覆されないので残念。


読者は面倒でもやはりそれぞれの分野のより見識のある人物の著書を一つずつ読んだほうがよい。
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